イベントレポート:2022 技術講演会
2022.11.18 Update
イベントレポート:2022 技術講演会
ご講演
「表面・界面分析による高機能材料の開発推進」
富士フィルム株式会社 CTO室 解析技術センター
蜂谷 正樹 様
富士フィルム株式会社 蜂谷様からは「表面・界面分析による高機能材料の開発推進」と題して、TOF-SIMSデプスプロファイルへのインフォマティックスの活用と、Ar-GCIBスパッタリングの具体的な活用例についてご講演いただきました。
インフォマティックスの活用では界面偏在成分の解析例をお話しいただき、NMF(non-negative Matrix Factorization)による多変量解析の強みが示されました。
Ar-GCIBスパッタの活用では、2つの方法を紹介していただきました。まず、C60/Ar-GCIB共スパッタ法による深さ方向分析では、同時照射により有機ダメージ・シリカフィラー残留が低減することで、それぞれの単独照射時に見られる凸凹を抑えられ、高分解能が得られることをご紹介いただきました。続いて、Ar-GCIBスパッタ回収法では、高分子薄膜の表面30~50nmの成分のみの取得・解析に成功した事例を、具体例を用いてお話していただきました。なかでも、機械式時計を使用し、試料を自動回転させることで回収効率の向上に繋げたお話が大変興味深く印象的でした。
また、様々な課題を解決するにあたり、開発・製造課題を「自分ゴト」と捉えることが大切だとお話しいただきました。技術的な面だけでなく、業務に対する取り組み姿勢についても大変勉強になるご講演でした。
「企業内解析部門の役割 -住友電工の場合-」
住友電気工業株式会社 解析技術研究センター センター長
木村 淳 様
住友電気工業株式会社 木村様からは銅から始まった同社の歩み、そこから培った技術で発展した今の住友電工を支える5つの事業分野(自動車・情報通信・エレクトロニクス・環境エネルギー・産業素材)、この事業分野を支える研究開発・分析解析部隊との関係性を解析技術センター長というお立場からお話しいただきました。
住友電気工業の広報誌にありました、解析とは「見えないものを見えるようにする」という難題に対して分析・解析部門がどのように課題解決を担っているのかを分かりやすい事例を用いて解説いただきました。
特に解析費用の回収という観点から、企業の幹部の方やあらゆる階層の方に対して解析部門がいかに役立っているかを数値化してきたことが今日の同社・解析センターの発展に繋がっているのかを大変よく理解することができました。
また、これから必要となる解析技術のお話しの中で出た、計算科学・自動化・大量データ・デジタル解析などのご提言について、分析装置メーカーの私たちは、これらのキーワードをかみ砕いて新たな役立つツールを世に発表できればと考えながら聞かせていただきましたが、会場のお客様は、解析センターの立場では共感を、組織運営の立場では多くの学びを得られたように感じました。
「全固体電池―課題とサイエンス」
東京工業大学 科学技術創成研究院
全固体電池研究センター センター長
菅野 了次 様
東京工業大学 菅野様は先駆的な全固体電池材料の研究によって世界的に著名な研究者です。技術講演会では、「全固体電池―課題とサイエンス」と題した講演をいただき、蓄電池の歴史から、全固体電池の特徴、さらに全固体電池の現在と未来の探察に関する研究について先生自らお話しいただくという、たいへん貴重な機会を得ることができました。
将来の電池の全固体化を目指した物質探索の課題を明らかにしていくなかで、固体の中をイオンが高速で動き回ることのできる固体電解質を探し出し、超イオン伝導体Li10GeP2S12(LGPSと記述)の発見に至った経緯と、全固体リチウム電池の実用化に大きく近づいた現状を詳しく知ることができました。
狙った物質の近くに成功する物質が必ずある、という信念にもとづいて様々なイオン導電体の結晶構造を探察し、さらに新物質を見つけて、新しいカテゴリーのデバイスの登場を促すに至る、という深みのある研究内容で、感銘を受けた方が多かったと思います。電極材料、電解質材料の組み合わせとその界面形成技術の総合的な最適化によって始めて実現される全固体電池技術は化学 – 電気エネルギー変換デバイスの理想形とされ、将来の技術として大きな期待が寄せられています。
貴重なご講演をありがとうございました。
アルバック・ファイより
製品戦略部より当社XPS新製品「PHI GENESIS」について発表いたしました。
続いてソリューション開発室より「PHI nanoTOF 3 FIB-TOFによる埋もれた界面のイメージング」ついて紹介いたしました。