イベントレポート:2015 ユーザーズミーティング
2015.03.17 Update
イベントレポート:2015 ユーザーズミーティング
ESCA/AESユーザーズミーティング (2月3日開催)
午前中は基礎講座を実施いたしました。
初めに、分析室 寺島よりESCA基礎講座 解析編と題し、Cuの化学状態分析について基礎から応用まで幅広く説明いたしました。続いて、分析室 間宮よりMultiPakの新機能の中で便利な内容を抜粋して紹介しました。日々の業務にすぐに役立つ内容であったこともあり、質疑応答の際にはたくさんの方から質問をいただきました。
午後はユーザー様より、4件のご発表をいただきました。
機能向上と環境負荷低減の両立に向けて
「溶接材料開発におけるXPS活用例
~ステンレス鋼溶接ヒューム中の六価クロム低減技術~」
神鋼溶接サービス株式会社 木部 奈緒子 様
生産部門の製品検査、開発支援、外部受託分析など幅広い分析業務に携わっているという神鋼溶接サービス 木部氏からは、溶接技術の基礎から溶接技術に如何にしてXPSが活用されているかなど丁寧にお話しいただきました。とくに銅の変色原因評価、溶接破面における凝集元素調査、さらに溶接時に発生するヒューム中の六価クロム低減対策などいずれもXPSがその評価に用いられた具体的な事例をご紹介いただきました。 溶接時のヒュームについて材料性能と環境負荷低減をいかに両立させるか、質疑ではさらなる技術的アプローチも含めた議論が行われました。 |
電子線照射に伴う材料のわずかな変化も見逃さない
「電子線照射がオージェピークに及ぼす影響」
株式会社日立パワーソリューションズ 宮岡 秀治 様
ナノスケール構造体から、マクロな構造体まで幅広く分析・解析を行えることが当社の強みと話す日立パワーソリューションズ 宮岡氏からは、電子線照射に伴う試料の化学状態の変化について検討した結果をご報告いただきました。電子線の加速電圧や照射密度を変えた際の試料の化学状態変化を詳細に解析されただけではなく、得られた結果に基づいた日常のオージェ分析の条件設定における注意点についてもご紹介いただきました。 |
オージェ分析で材料を正確に評価するために
「オージェ電子分光分析法による界面近傍の定量分析手法の開発
~超硬工具基材のCo結合相への応用~」
三菱マテリアル株式会社 奥村 洋史 様
超硬工具の材料に用いるWC材料においてCo結合相中のW濃度評価が重要であると話す三菱マテリアル 奥村氏からは、物質界面近傍のAES分析において信頼性の高い定量結果を得るために開発した解析技術についてお話しいただきました。 背面散乱電子の影響をいかに取り除き、AESの定量結果の信頼性を高めたのか。そのアプローチについて詳細にご紹介いただきました。 その精度についてや他の材料系への展開など質問も多岐にわたり会場の関心の高さが伺えました。 |
微小領域の解析から新材料の構築につなげる
「ガラスを前駆体とする二次電池材料開発」
国立大学法人長岡技術科学大学 本間 剛 様
長く酸化物ガラスのご研究に携われてこられた長岡技術科学大学 本間氏。今回は、ガラス中の多価カチオンの定量的評価が如何に重要であるか、銅の価数とガラス転移温度の関係をXPSとの相関を交えて評価した事例や、架橋・非架橋酸素と塩基度の関係など古くからXPSの評価対象であった事例などをご紹介いただきました。さらにガラス材(セラミックス)を出発点とした最新の材料開発状況についても詳細にご紹介頂きました。電池材料の新たな展開に注目が集まりました。 |
ユーザー様からのご発表後は、当社より新製品・新技術についてご紹介させていただきました。
SIMSユーザーズミーティング(2月4日開催)
午前中は基礎講座を実施いたしました。
TOF-SIMS 基礎講座と題し、測定編と解析編に分けて発表いたしました。測定編は分析室 飯田が担当し、日々の測定時に役立つノウハウをご紹介。続いて解析編では、WinCadenceの新機能を中心に、知っていると便利な機能や操作について、分析室 石崎よりお話しさせていただきました。どちらもすぐに役立つ内容ということもあり、お客様からの感想も好評でした。
午後はユーザー様より、3件のご発表をいただきました。
in-situで電池材料の動的観察を実現
「電流-電圧印加機構を用いた全固体型LIBの解析」
独立行政法人物質・材料研究機構 増田 秀樹 様
リチウムイオン電池(LIB)は携帯機器用や車載用など応用範囲が益々広がっていく中で、大容量化・高密度化が求められる昨今、より良いLIBの開発指針を得ることを目的として、研究所では全固体型LIBを動作試験しながらその場計測が可能な分析装置の開発に従事していると話す物質・材料研究機構の増田氏。今回は、充放電過程に伴う元素分布の変化を捉えるために開発したTOF-SIMS装置内で充放電が行えるユニークなシステムについてご紹介いただきました。充放電過程に伴うLiイオンの分布の変化が非常に高い空間分解能で捉えられていて、参加者の注目を集めていました。今後のLIBのさらなる発展が期待されます。 |
表面分析はモデル試料分析から実デバイス分析への展開がキー
「TOF-SIMSを用いたIII-V化合物半導体プロセスの評価」
古河電気工業株式会社 大友 晋哉 様
研究開発の戦略構想を手掛けてこられた古河電工 大友氏には、昨年に引き続き、今年もご発表いただきました。 SEMやTEMに比べて表面分析は実デバイス分析の点で後れをとっていると話す大友氏。昨年はD-SIMSのご発表でしたが、今年は表面分析の中でも空間分解能が高いTOF-SIMSに着目され、前半はドライエッチング後のGaN表面の残渣分析、後半はGaN表面のMg表面偏析の評価事例をご紹介いただきました。 対象としている元素の濃度が比較的高い領域ではXPSやAESを、逆にXPS、AESでは検出できない微量な領域はTOF-SIMSを用いた分析をと、両者の特徴を活かした評価をされていたのが印象的でした。 |
試料中に含まれる「水」を超高真空装置内で分析
「SIMSによる試料中水分評価」
株式会社東レリサーチセンター 宮本 隆志 様
東レリサーチセンター 宮本氏からは、ディスプレイ材料中の水分をSIMSを用いて評価した分析事例をご紹介いただきました。 D-SIMSの豊富な経験に加えてディスプレイ関連材料の分析評価技術の開発を統括されているという宮本氏。 ディスプレイ材料においては水が劣化の原因となるため、その侵入経路や、浸透度合いを正確に評価することが重要で、今回は重水を用いた詳細な検討結果についてご発表いただきました。水を超高真空装置で測定するという非常に興味深いお話で、質疑応答では活発な議論となりました。 |
ユーザー様からのご発表後は、当社より新製品・新技術についてご紹介させていただきました。
電子分光装置における新技術とその新たな応用例
技術部 渡邉より、現在開発中の電子分光装置の2機種をご紹介いたしました。従来の走査型X線光電子分光分析装置(XPS)で得ることが出来なかった深い領域の測定を可能にする世界初のラボ型『HXPS』と、新型FE銃を搭載したことで低損傷、高感度な分析を実現させた新しいオージェ電子分光分析装置(AES)『PHI 4800』について、最新の測定データ等を交えて発表しました。
アルバック・ファイにおけるTOF-SIMS装置の新技術開発
分析室 飯田より、新製品「PHI nanoTOF II™」をご紹介いたしました。目覚ましい進歩が見られるTOF-SIMS装置において、従来の当社装置の長所を踏襲しつつ、新技術を搭載した『PHI nanoTOF II™』について詳しくお話しさせていただきました。発表後は多数のお問い合わせをいただきました。
(レポート作成:アルバック・ファイ株式会社)