PHI 710
オージェ分析では、SEM観察により分析位置を特定した後、スペクトル・デプス・マップ測定等の分析をおこないます。SEM観察のためには細く収束した電 子ビームが必要であり、オージェ分析のためにはオージェ分析可能な電流で測定の間、非常に安定している電子ビームが必要です。
PHI 710 は電源の低ノイズ化を進めて、
SEM分解能3 nm以下を実現しました(図1)。
また、振動・音響・温度変化の影響を極力小さくするアコースティック・エンクロージャを採用し、分解能8 nm(20 kV,1 nA)以下でのオージェ分析が可能です。
図2に、ダクタイル鋳鉄の割断面の粒界介在物を分析した例を示します。左から、二次電子像、Ca(青)Mg(緑)Ti(赤)のオージェマップ、硫黄のオージェマップを示します。数十nmの介在物の微小な化学分析が実現していることが示されています。
同軸円筒鏡型アナライザー(CMA)による
高感度・高スループット分析
同軸円筒鏡型アナライザー
同軸CMA(Cylindrical Mirror Analyzer)は、分光器の中心軸上に電子銃を配置するPHI社独自の電子分光器です。CMAは360度全方位に放出されるオージェ電子を取り込めるので、試料形状や傾斜角の影響を受けにくいという利点を持っています。
図3に同軸CMAと非同軸型分光器SCAの感度特性を示します。CMAは垂直入射から斜入射まで高い感度特性を示すと共に、角度依存性の少ないフラットな感度特性が得られています。これにより、様々な入射角、試料形状で定量性に優れたデータを取得することができます。
スペクトルマップ
PHI 710のオージェマップ測定では、各ピクセル毎にスペクトルを保持するスペクトルマップの取得が可能になり、スペクトル解析に基づいた化学状態マッピングを実現しています。
高エネルギー分解能オージェマップ
図5に半導体チップの電極について、高エネルギー分解能のSi KLLスペクトルマップ測定を行った結果を示します。Si KLL スペクトルに最小二乗フィッティング(LLS:Linear Least Squares Fitting)を適用することによって、元素Si、酸窒化Si、金属シリサイドの三つの領域が明瞭に分離できています。下段にはマップデータから抽出した三つの状態別のSi KLLスペクトルを示しています。