表面とは

表面とは

表面とは何でしょうか? 表面とは、固体の手で触れることができる部分や、目で見ることができる部分。つまり、接触や、光によって、固体が人間などの外界と係わりを持つ場所といえます。固体が表面を通じて影響を与える相手は人間だけではなく、空気や水、他の固体も含みます。従って、私たちの身の回りのものは、表面を通じて外界や他者と共同作業をしており、表面がなければ固体は他者と関係を結ぶことはできません。

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表面の重要性

固体の表面の特性を変化させることによって、固体そのものの性能を変化させずに、その固体が他者(環境条件や人など)から受ける影響やその個体が他者に与える効果といった相互作用を変化させることができます。つまり、固体の特定の機能を必要に応じてコントロールできるということです。

たとえば、自動車を例にとってみましょう。自動車のボディは硬い鋼板で作られていますが、鋼板は腐食(錆)を防ぐために、化学的に安定な酸化膜で覆われています。さらに、ボディの表面は美しい色を与えるために塗装され、また、化学的に安定なポリマーでコーティングすることにより、ツヤを与え、油汚れや手あかを付きにくくし、傷を目立たなくすることもできます。透明な材料であるガラスには、透明な硬い物質という性質を変えることなく、光の反射を防止するための膜のコーティングや、光触媒という汚れを分解する表面処理を用いて、さらに多様な機能が付与されています。

このように、現代においては、高機能な付加価値の高い製品を開発するために、表面を設計し、改良を加えること、そしてその表面を正しく知ることは、ますます重要になってきています。

表面に接するモノとの相互作用

固体にはさまざまな性質があります。
このうち、固体の内部と必ずしも相互作用する必要のない性質、つまり、

  ・汚染防止
  ・腐食防止
  ・接着
  ・硬さ
  ・摩擦・潤滑性能
  ・色(ただし不透明な固体の場合)
  ・導電性・絶縁性〔電気的性質〕
  ・磁性〔磁気的性質〕

などは、表面の性質を変えることによって変化させることができます。
たとえば、一般的な半導体デバイスは表面を通じて電気的な相互作用をおこないます。ハードディスクなどの磁気デバイスはその表面を通じて磁気的な情報交換を行います。

一方、固体の強度や弾性など物質全体が関与するような性質、あるいは、電磁波や放射線、透明な物質における光など、物質を透過してしまうものとの相互作用に対しては、一般的に表面の影響は少なくなります。反対に、固体が小さくなると、表面の占める割合が大きくなり、外界との相互作用は大きくなります。

表面を知ることの重要性

このように、固体の表面の特性はその固体全体の特性において重要な役割を持っています。チタン合金を例にして、表面がその物性に及ぼす影響についてみてみましょう。

チタン合金は軽くて硬い優秀な材料で、眼鏡のフレーム、形状記憶材料、整形外科や歯科などの医療材料など多くの機能材料に使われています。しかし、その表面を詳しく調べると、チタン合金そのものが表面に存在しているわけではありません。外界との相互作用で、何らかの変化が生じている場合がありますし、接着性や化学的安定性、生体親和性の向上などの目的で、表面を加工している場合もあります。また、チタン合金の中のある成分が形成中に表面に集まる変質がおこることによって、表面が酸化(変色)しやすくなるといった問題もあります。したがって、その表面が期待したような構造をしているのか、あるいは外界との相互作用によってどのように変化しているのかを調べることは、その固体の特性を理解するうえで非常に重要です。

固体表面の汚染や接着性などを議論するためには、表面数原子層という非常に薄い領域を分析する必要があり、固体表面の色や電気的・磁気的性質に関しては、表面から1ミクロン以下の領域の性質を詳しく知る必要があります。しかし、一般的な化学分析法は、固体全体の組成を調べる手法が多いため、固体のごく表面だけを知るためには、表面分析法が必要となります。

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