TRIFT™型アナライザーについて
2014.11.19 UpdateTOPICS
TRIFT™型アナライザーについて
凹凸に強いTRIFT™型アナライザー
試料表面から放出される二次イオンは、 初期エネルギーと角度を持っています。そのため、 同じ質量のイオンでも飛行時間差が生じてしまいます。飛行時間差の発生は質量分解能の劣化につながります。
トリプルフォーカス静電アナライザー(TRIFT型アナライザー)では、初期エネルギーと放出角度の違いによって発生する飛行時間差を同時に補正します。
エネルギーと放出角度による飛行時間差を同時に補正できることはTRIFT型アナライザーの最大の特徴であり、 高質量分解能と高検出感度を同時に実現し、 なおかつ、 影の少ないイメージングを行うことが可能です。
試料形状による電場の歪みと二次イオンの軌道
試料から放出される二次イオンは初期エネルギーと角度を持ちます。特に試料形状が複雑な場合、電場により放出角度は大きく影響を受けます。
左図は平面板の上に置いた球状試料周辺の電場の様子と、二次イオンの軌道を示しています。試料上だけでなく、平面板から放出された二次イオンも電場の影響を受け、大きく曲げられていることが分かります。
TRIFT™型アナライザーによる飛行時間差の補正
TRIFT型アナライザーは、初期エネルギーや角度によって発生する飛行時間差を打ち消すことが可能です。
左図はアナライザー内の二次イオン軌道を模式的に描いたものです。
黒実線は、初期エネルギーを持たない二次イオンの軌道です。初期エネルギーを持つ二次イオンは、飛行時間差を打ち消すように外側を周回し、エネルギーの違いによる時間差を補正します(青線)。
一方、図示はしていませんが、二次イオンが飛行中の分裂などでエネルギーを失ったものは、内側の軌道を周回し、エネルギーフィルターで除去され、バックグラウンドの極めて低いスペクトルが得られます。
次に、角度を持つ二次イオンについて説明します。
角度を持った二次イオンは、角度を持たないイオンに比べ、アナライザーに入るまでに長い距離を走りますが、その分を補正するようにアナライザ内ではショートカットするように周回します(橙線)。角度に加え初期エネルギーを持つものは、その外側を周回します(赤線)。
このように、TRIFT型アナライザでは角度や初期エネルギーによって生ずる飛行時間差を補正することが可能です。
そのため、①試料形状に左右されない、②影のないイメージが取れる、③平坦化など特別なサンプリングが不要であることが、TRIFT型アナライザの最大の特徴です。
TRIFT™型アナライザーを用いた球状試料のイメージ
左図はアクリル系粘着剤の上にポリマー球を分散させた試料のTOF-SIMSイメージですが、試料周辺の電場の影響を受けず、球体全面影のないイメージングを可能にします。